「蓮二おまえにも予測できないことはあるだろう?」
【a fatalist】
人の行動の大半はデータによって予測できる。
【運命】1 人間の意志を超越して人に幸、不幸を与える力。また、その力によってめぐってくる幸、不幸のめぐりあわせ。運。2 将来の成り行き。今後どのようになるかということ。
【運命論】世の中の出来事は、すべてあらかじめそうなるように定められていて、人間の力ではそれを変更できないとする考え方。宿命論。
誰かが俺を達人(マスター)と呼んだ。まるで未来が見えている予言者のようだと……。
運命というモノがあるならばソレは個人の性格を基盤としているのではないだろうか。俺の予測があたっていることが証拠だろう。だが、俺にだって読めないことはある。ソレは他のナニよりも知りたいこと……けれど、他の誰よりも知ることを怖れている未来。
俺はソレが俺の望んでいるモノでないことに耐えられないだろう……俺にも予測できないことはある。俺は予言者などではない……傷つくことを恐れ自分自身をだましている……予測不可能な未来を怖れ、都合のいい未来を望む【a fatalist】……ただの臆病者だ。
部室での出来事から一週間が過ぎた。
弦一郎はいつもと変わらない。アレを怪しんでいないのだから当たり前だが……あの翌日も弦一郎の態度は変わらなかった。
俺はあの日から弦一郎に触れていない、二人きりになることも極力避けている。あの時のように自分を見失ってしまったら次は抑えきる自信がないのだ。そうなったら弦一郎を傷つけてしまうかもしれない……それだけは絶対に嫌だった。
だから俺はもう弦一郎に触れたりはしない。どんなに心が弦一郎を望んだとしてもオレという理性で押さえつけてやる。俺は二度とオレ(理性)を失ったりはしない。二度と……