【種】 《白哉》
薄暗い部屋
重い空気
それらを振りはらう明るい声と雰囲気を伴って勢いよく戸が開けられる
瞬間 目に入ったのは血のように紅い赤
そこにいたのは紅い髪と意志の強さを感じさせる瞳をもった一人の学生
男の紅い髪と瞳は学園の白い着物によく映えて美しかった
だが、男の瞳は私を捉えたとたん伏せられてしまった
その男は流魂街出身だと聞いていた
所詮、貴族に対する下々の反応はいつも変わらないのだ
以前、私は流魂街出身の女性を美しいと思った
彼女はやさしく 知性と気品であふれていた
しかし今、目の前にいるものは男でいかにも知性や気品というものからはかけ離れている
きっと気のせいだったのだろう
そうして、私はその男の横をとおりぬけた
それが恋の始まりだとは気づかずに…………